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2012年1月6日金曜日

財務会計「決算整理(3)」

棚卸資産の評価
  1. 棚卸差損

    会計上は期末の決算整理によって、帳簿上の期末棚卸高(帳簿棚卸高)を減額修正して
    実際の期末棚卸高(実地棚卸高)と一致するように修正する必要がある。
    帳簿上の期末棚卸高と実際の棚卸高との差額を棚卸差損という。

    棚卸差損の発生原因は以下の2つに大別される
    ①棚卸減耗 商品の紛失などによる数量的な目減り
    ②収益性の低下 時価の下落による単価面での目減り


  2. 棚卸減耗

    紛失・盗難・蒸発などの原因によって、生じる棚卸資産の数量的な減少。
    「棚卸減耗費」の科目を用いて費用として処理する。

    棚卸減耗費=@取得原価×(帳簿棚卸数量-実地棚卸数量)


    例1:
    当期の期首商品棚卸高 54,000円

    当期の期末商品棚卸高 帳簿棚卸高 数量300個 単価@200円

    実地棚卸高 数量280個 単価@200円


    決算仕訳例:
    (借) 仕入 54,000
    (貸) 繰越商品 54,000
    (借) 繰越商品 60,000
    (貸) 仕入 60,000
    (借) 棚卸減耗費 4,000
    (貸) 繰越商品 4,000


    2行目:期末帳簿棚卸高=帳簿棚卸数量300個×帳簿単価@200円=60,000円
    ※棚卸差損が存在する場合でも、期末棚卸高を仕入から繰越商品へ振り替えるときには
    必ず帳簿棚卸高を用いる。
    3行目:@200円×(帳簿棚卸数量300個-実地棚卸数量280個)=4,000円
    B/S「商品」・・・56,000円

    なお、棚卸減耗費は以下のようなBOX図を利用して算定することができる。
  3. 収益性の低下

    期末に棚卸資産の時価が取得原価よりも低い場合、時価をもってB/S上の価額とし、
    取得原価と時価との差額は「商品評価損」などの勘定を用いて当期の費用とする。

    商品評価損=(@取得原価-@時価)×実地棚卸数量


    例2:
    当期の期首商品棚卸高 54,000円

    当期の期末商品棚卸高 帳簿棚卸高 数量300個 単価@200円
    i 実地棚卸高 数量300個 単価@210円
    実地棚卸高 数量300個 単価@190円


    1. 取得原価<時価の場合

      期末において時価が取得原価を上回っている場合は、棚卸資産の価額は修正せずに
      取得原価のままで据え置く

      (借) 仕入 54,000
      (貸) 繰越商品 54,000
      (借) 繰越商品 60,000
      (貸) 仕入 60,000

      B/S 商品・・・60,000円

    2. 取得原価>時価の場合

      期末において時価が取得原価を下回っている場合、
      保有する棚卸資産の収益性が低下しているものとして

      (借) 仕入 54,000
      (貸) 繰越商品 54,000
      (借) 繰越商品 60,000
      (貸) 仕入 60,000
      (借) 商品評価損 3,000
      (貸) 繰越商品 3,000


      2行目:期末帳簿棚卸高=帳簿棚卸数量300個×帳簿単価@200円=60,000円
      3行目:(取得原価@200円-時価@190円)×実地棚卸数量300個=3,000円
      B/S「商品」・・・57,000円

      なお、商品評価損は以下のようなBOX図を利用して算定することができる。


    収益性の低下により、棚卸し資産の簿価を切り下げた場合の次期以降の処理
    ⇒切放し法と洗替え法の選択適用
    1. 切放し法

      収益性の低下により切り下げた棚卸資産の価額を次期以降もそのまま
      棚卸し資産の帳簿価額として利用する方法

      各会計期間を切放して考える。
      次期に繰り越される商品の金額=評価切り下げ後の金額(時価)
      仕訳無し

      次期の期首商品原価は57,000円
    2. 洗替え法

      収益性の低下による棚卸資産価額の切り下げ額を翌期首に洗替えることにより、
      再び取得原価に戻す方法。

      (借) 繰越商品 3,000
      (貸) 商品評価損戻入益 3,000


      次期の期首の金額=最初の取得原価
      結局次期には商品の原価=60,000円(最初の取得原価:原始取得原価)

  4. 棚卸減耗と収益性の低下の両方が起きているケース

    例3:
    当期の期首商品棚卸高 54,000円

    当期の期末商品棚卸高 帳簿棚卸高 数量300個 単価@200円
    i 実地棚卸高 数量280個 単価@190円


    決算整理仕訳
    (借) 仕入 54,000
    (貸) 繰越商品 54,000
    (借) 繰越商品 60,000
    (貸) 仕入 60,000
    (借) 棚卸減耗費 4,000
    (貸) 繰越商品 4,000
    (借) 商品評価損 2,800
    (貸) 繰越商品 2,800


    3行目:@200円×(帳簿棚卸数量300個-実地棚卸数量280個)=4,000円
    4行目:(取得原価@200円-時価@190円)×実地棚卸数量280個=2,800円
    ※時価@190円×実地棚卸数量280個=53,200円
    ・B/S「商品」・・・53,200円

    以下のようなBOX図で算出することができる。


  5. 財務諸表上の表示
    1. 貸借対照表上の表示

      貸借対照表上の「商品」の金額は棚卸差損を減額した後の金額、つまり期末実地棚卸高となる。
      算出式は以下のとおり

      B/S「商品」 期末帳簿棚卸高-棚卸減耗費-商品評価損

      @単価×期末実地棚卸数量


      単価には商品の取得原価と時価のうち低いほうが当てはまる。

    2. 損益計算書上の表示

      1. 棚卸減耗費

        原価性がある場合
        「売上原価ないしは製造原価の内訳科目」または「販売費」

        原価性がない場合
        「営業外費用」または「特別損失」

        原価性がある・・・通常の営業活動の中で経常的に発生する、経営者が予見できる。
      2. 商品評価損

        通常:売上原価なしは製造原価の内訳科目
        臨時の事象に起因し、金額的に大きい場合は、「特別損失」に計上する。
      棚卸差損の損益計算書上の表示


    3. 例3について、棚卸減耗費は販売費に表示、
      商品評価損は売上原価の内訳科目とする場合とする場合、
      損益計算書は以下のとおり。売上高250,000円、当期商品仕入高は186,000円とする。

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